カテゴリ: トーク


ご好評いただきました広島野球ブックフェア(広島市民球場跡地)での「プロ野球解説者を解説するを解説する」トークlにつづいての広尾晃氏の登場です。

今回は広島野球ブックフェアのモバイルスタジオでの収録。(2014.10.21)
10月26日に出版された近著「もし、あの野球選手がこうなっていたら」をサカナに、世間では“タブー”といわれる「たられば話」を心ゆくまで語り合いました。

まずはその第1回です。

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プロ野球解説者を解説する
プロ野球解説者を解説する

いよいよ広島野球ブックフェアのトーク第2弾、「『プロ野球解説者を解説する』を解説する」の最終回です。  

 ゲスト 広尾 晃氏(「プロ野球解説者を解説する」著者)  
 ホスト 堀 治喜(広島野球ブックフェア実行委員会) 
 司 会 渡部裕之氏 

〈前回のつづき〉

堀  ぼくは前田の本を書くとき、彼の野球人生の中でもひとつの大きなエポックだっ
   た、あの東京ドームでの… 

広尾 はいはい、あれね。ありましたね。 

堀  エラーしたときの。 あのときの映像をユーチューブをあらためて見たんですね。
   エラーして前田智徳は号泣した。 
   あと8回だったかな、(ミスを挽回する)勝ち越しのホームランを打った。
   そのときに(解説の)江川(卓)が「ことばが出ませんね」といったのよ。 
   で、それを受けて掛布(雅之)が「いやー、入団3年目の選手が、こんなことして
   くれるんですから…」と、野球っていいなっ、と。

   あのとき前田がチォンボした。ホームラン打った。すごいことやってんだけど、あ
   れをうかつなアナウンサー、解説だったらあそこまで感動をなぞれない。 
   ションベン行きたいばっかりの解説者とかじゃ。(笑

広尾 そうですよね。 

堀  あの江川と掛布の掛け合いが、それからの前田智徳を決定づけたといっても過言で
   はない。(笑 
   それほどのインパクトがあった。

広尾 そうですよね、あのころの江川さんはよかったんですよ。 

堀  あのころの?

広尾 掛布さんもよかったですよ。あのころはふたりとも。 
   まだ江川さんがフリーで、日テレの専属でないころでしょう、たぶん。 
   で、いろいろゲストで来てて、とくに掛布と江川というのは現役時代のライバルで
   したから、すごくいい、響き合う解説してましたよね。 

堀  そうなんだ。 

広尾 でもあのとき前田は、ヒーローインタビューを拒否するんですよね。 

堀  そうそう、そう。 だからあの日に前田智徳というのは、すべて語りつくされてい
   る。あっはっはっ。(と笑って失言をごまかす)

           前田智徳天才の証明 [ 堀治喜 ]
        前田智徳天才の証明 [ 堀治喜 ]

広尾 あのとき、その手には乗らないわいという前田というのはよかったですよね。 
   「感動です!」とか、「(ミスを取り返せて)よかったです!」といわなかった。 
   あのときまだ、エラーの方を悔いていたわけでしょ。 

堀  野茂ポルンリンクル(第1回を参照)だよね。調子いいことはいわない。(笑 

広尾 (つまらない冗談は無視して)そういうの、いいですよね。 
   この感動を誰に伝えたいですかっていう、あのアナウンサーの質問は大っきらいで
   すね、ぼくは。 

司会 をっ、はっはっ。(と大笑い 
   ぼくも、たまにしますわ。 

広尾 ほっとけよ、って。 
   そのときぜひいってもらいたいのは、「隣の山田さんちで飼ってるプードルのメ
   リーちゃんに伝えたいです」っていってもらいたい。 

司会 あっは、はは。(吹き出す)

広尾 そうでもいえば、あんな質問はなくなるんじゃないかな。 

堀  でも、そういう感覚の観客ばっかじゃないとおもうけどね。(苦笑

司会 求めているであろう。そして、いわせたい。それはメディア人間のサガですかね。
   ぼくもいろいろインタビューとかしますけども、決まり文句ではないんですが、き
   のうからもね何度かきのうも(大野豊氏や木下富雄氏とか)いろいろな方にお話を
   うかがっている中で、じゃ最後にファンのみなさまにとか、締めのことばとして、
   つい出してしまうというのがあったりして。 

堀  そういえば、きのう(大野豊氏と木下富雄氏とのトークで)もありましたね。(笑 

司会 しましたしました。いまズキっとここに刺さりました。(と胸に手をやる)

広尾 「(選手は)明日も来てくれるかな!」とかいうんですよね。 

司会 そうですよねぇー。

広尾 そうじゃなくて「早く帰れ!」とでもいったほうがいいんじゃない。
   「さっさと帰れ!」とか。

堀  そんなことがゆるされない風土になっちゃってる。野球に限らずね。

広尾 せっかくね、パスを持って選手にインタビューできる権利を持っている記者も、な
   んでこんなつまらないことを聞くのか、っていうのがあるんですよ。

司会 なるほど。 

広尾 ちょっとシビアな話になりましたけど。

司会 いえいえ。この人だからこそ、よく聞いたねっていうのがあったらいい、と。

広尾 そうそう。本当のスポーツのアナウンサーというのは、それができるからね。 あ
   んまり野球ではいないですけど、相撲では優秀なアナウンサーというのはちゃん
   と見どころ聞きますよ。 
   たとえば変化ワザで勝ったお相撲さんがいるとして、「きょうは仕切り線の手前で
   仕切ってましたね」ということを聞く。
   お相撲さんは、おやっという顔をして、ああ、わかってるなという感じで、そこか
   ら話が深まったりするんですけど、野球の場合は、まずないね、それは。 

司会 ちょっと自分と照らし合わせながら、いまのお話を聞いておりますけれども…

堀  広尾さん、MCを解説してますね。(笑 

広尾 今度、MCはやりたいですけどね。出してくれるかどうかは別にして。

司会 MCでインタビュー? そのMCをやる立場というのは。 
   たとえば隣に作家の堀治喜さんがいらっしゃいますけど、そのインタビューをMC
   として聞いたりとかしてみたいということですか? 

広尾 いや、ぼくはインタビューして文章を書くことがすごく多いんで、自分でやるとき
   は、やっぱり同じように仕切ってしまうんですけどね。 
   でも、それやっちゃうと面白くないというのは(自分でも)わかりますよね。
   インタビューするときは、相手を気持ちよくさせるために、予定項に入れていくと
   いうのはあるでしょうけどね、テクニックとしてはね。 

司会 まあ、いろんな方にインタビューされて、その中からチョイスされる… 

広尾 そうそう。もちろんそうです。 

司会 それでひとつの本、かたちになるわけですけども… 

広尾 そうそう、きのうここに座られた長谷川(晶一)さんなんてのは、ぜったいにそれ
   をしないですよね、あの人は。
   菊地(選手)さんに聞いたけど、沈黙を怖れない作家っていうのね。(相手が)黙
   りこくっても平気だとしうの、あれすごいなとおもう。(第1回を参照)

   夏を赦す [ 長谷川晶一 ]
夏を赦す [ 長谷川晶一 ]

司会 をぉっ、はっはっ。 

広尾 ぼくは絶対にそれができなくて、先回りして、いろんなことばを紡いでしまうけ
   ど。
   ほんとに人の嫌がることを聞こうとしたら、そういないといかんのでしょうね。

司会 インタビュアーとしては、この沈黙というのは、ものすごく怖かったりするもんな
   んですけどね。 

広尾 ぼくも怖いですよ。

司会 うっわっはっ、はっ。

堀  「沈黙!」

司会 いま待ってたでしょ、沈黙を。

堀  おれは大丈夫よ、沈黙。(笑 
   10秒くらいやってみようか。

司会 やめてくださいよ、マイク、オフってしまいますからね。

堀  まあぼくの場合は、しゃべっても聞こえないから。(笑 
   沈黙といっしょのしゃべり。 

広尾 まあ、そんなところですね。(と困惑して話題を変えようと) 

司会 いま、インタビューを怖れてきているわけではないんですけども、このおふたりは
   このあとどういう会話をしていくんだろうと…。 
   堀さんが(広尾さんに)聞いてみたいといってたわりには…、もう解決?

広尾 あのね、ぼくは堀さんとは(東京の)ブックフェアでお隣同士になったりしたこと
   ありますけど、あんまり会話しませんもんね、堀さんってね。黙って座ってますよ
   ね?

堀  面倒くさい。(笑 

司会 ふっ、ふっ。

広尾 きょうはすごいしゃべるほうですよね。

堀  まあ、しゃべれといわれれば… 

司会 じぶんがしゃべると聞いて、はじめ隣にいてね、というお話だったんですけど、結
   局まわす役やらされてる。

広尾 それは素晴らしいですよ。ぼくとふたりだけだったら、どうなっていたかわかりま
   せんよ。 「最近腰痛くない?」とか、年寄りのグチになってたかも。 

堀  ぼくは沈黙を怖れないから。ふっ、ふ。 (そこにサイレンの音)

司会 このステージが炎上してるから。(笑

堀  すごいね、それにしても。ぼくらがしゃべり出したら豪雨はくるし、サイレンは
   ウーウーいうし。

司会 いろんなことが起きてますよ。 

広尾 (そんな喧騒をよそに、ひとり騒動を怖れない作家が)この位置から原爆ドームが
   見えるんやね。

司会 そうですね。あの旧市民球場があったときとかも、外野席から見えましたからね。

広尾 これ(ステージ)ちょうどセンターあたりの位置やから、原爆ドームを右手に見な
   がら野手は守っていたわけやね、山本浩二は。 

司会 うふ、そうですね。ライトスタンドの連中は、この球場越しに原爆ドームを見て
   育って来たという…。 

広尾 すごい話ですよね。 

司会 先ほどちょうど若杉(雅也・「世界の野球写真展」ブースを当日出展)さんの話が
   出ましたけれども、(前日のトークで)野球場全体を俯瞰するっていう、その空の
   景色も合わせて全部を見るっていう話がありましたけど、広島で市民球場があった
   時代にカープを楽しんでいた方々というのは、それが当たり前の光景として育って
   来たという人たちですよね。 

広尾 よく中継で、このアングルを抜いた画像って入りましたよね。 

司会 はい、ありました。よくご存知で。 
   (カープに限らず)各球場とか各チームとか、大阪、関西ご出身ということだから
   関西中心ということではなくて、いろいろなチームのデータとか印象に残ったこと
   とか記憶、記録されてたんですね。 

広尾 昔のとこばっかりで、今はもうないんよね、ぼくが行ってた球場って。

司会 昔あった球場というと? 

広尾 関西でいうと大阪球場。さっき聞いたら知らんていわれてショックだったんやけ
   ど。

司会 すんません。

広尾 大阪球場知らん人がいてるとはおもわなかったけどね。 
   で、大阪球場でしょ、日生球場、藤井寺球場。それから、もう川崎(球場)もない
   よね。 
 
           藤井寺

   それから西宮球場がないでしょ。 だから関西でいうと、いま甲子園とグリーンス
   タジアム、いまの、ほっともっと(フィールド神戸)ですね。 あと、わかさスタ
   ジアム、西京極球場と京セラドームくらいですかね。中モズ(球場)もなくなっ
   たし。 
   だから、ほんとに昔のションベン臭い野球場が、まったくなくなっちゃって。 神
   宮だけですね、そういう匂いがするのは。

司会 そういう雰囲気のある球場、と。 

広尾 座ってて、わびしい気持ちになる球場がなくなりましたよね。
   広島もそうでしたよね。

司会 旧市民球場は、ちょっとわびしいというか… 

広尾 なんとなく暗いようなね。 昔の中日球場もそうでしたね。
 

  
堀  沈黙しながら聞いてたんですけど、球場がションベン臭くなくなって来たのと、解
   説者の解説がつまらなくなって来たのとが重なるような気がする。 

広尾 いや、たぶんそうでしょ。

堀  解説がつまらなくなったせいもあるんだろうけど、あんまり観ないんですよ。
   観てられない。

広尾 放送を?

堀  うん。 

司会 ほーっ。 

堀  まあ、あんまり個人的なことはあれだけど、Rという放送局に某解説者がいるんで
   すけど、聞いてられないんですよね。語彙がないというか、空気が読めないという
   のかな、語りにリズムがないというか。 
   まあ人柄はいいらしくて、それで使われているのかもしれないけど、野球の中継で
   彼の解説はちょっと勘弁、という方がいるんてすよね。

   べつに腹立つわけじゃないんですよ。だけど観てられない。(これでもフォローは
   したつもりらしい) 

広尾 解説者がいないと間が持たないから、というんで居るような人もいますよね。

堀  野球場がションベン臭くなくなったかわりに、味も素っ気もない解説者が頻繁に顔
   を出す。 

広尾 広島もそうですか。 

堀  でもね、前言を否定するみたいだけど、これってぼくたちの世代感覚なんだよ。

広尾 あのー、人が入らない球場で、のんびりビール飲みながらヤジを楽しむみたいなの
   が昔の観戦のスタイルだったけど、いまは民族の祭典みたいでしょ、とにかく。 

堀  ふっ、ふっ。 

広尾 マスゲームかっ、て感じでワーってやってるじゃないですか。 あれをブログで攻
   撃したら、猛烈に炎上しましてね。お前は出てけっ!みたいになりましたけど。
   (笑 
   だけど今だに、ぼくは好きじゃないですね。 

堀  今はヤジを入れるスキがないじゃないですか。 

広尾 聞こえないよね。

堀  のべつ幕なし、鳴りものと喚声でね。 プレイが解説を通してプレイとして完結す
   るというのと同じで、スタンドの観客もつくってるわけじゃない、印象をね、間
   接的に。 
   そういう意味では、ゲームが面白くならなくなってきてるのかもしれない。 

広尾 野球で盛り上がる前に、自分たちが盛り上がってしまうから… 

司会 たしかに、野球を観に行くのか、応援を楽しみに行くのか… 

広尾 そういう人たちを否定しては野球の将来はないから… 
   カープ女子なんていうのは、ぼくはいいとおもいますけどね。 


司会 あれですよね、立ったり座ったりという応援スタイルっていうのは、またカープ
   の…

広尾 それから入ってでも、野球を好きになってくれればその方がいいしね。 

司会 楽しみ方はいろいろあるよ、というね。

広尾 でもぼくはウェーブが来ようが、風船飛ばそうが絶対にそれはしない。 

司会 なるほどー。(と終了予定時間を確認する)
   ということで、まあ野球本を書かれていらっしゃるおふたり、とくに「プロ野球解
   説者を解説する」という本を書かれた広尾さん… 

広尾 あのー、まだたくさん在庫がございますので、ぜひ。 

司会 おーっと、PR入りました。 

広尾 お買い上げいただければサインもさせていただきますし。 この雨の中来ていだい
   た記念に買っていただければとおもいます。

司会 はい、わかりました。 
   堀さん、解説はもうよろしいでしょうか。 

堀  自分が、なんかR局の解説者になったような気分。空気は読めてないし… 

司会 そういうのはどうなのかな、って観てた感じに自分がなってる?

広尾 まあ、味はありましたよ。

司会 もわっ、はっはっ。

堀  ションベンの味ですか? 

(そのとき、ふたたび土砂降りに)

司会 おふたりのお話、まさに水物だったということでしょうか、これをもちまして水入
   りでございます。 (完)
     

プロ野球解説者を解説する
プロ野球解説者を解説する

本日は広島野球ブックフェアのトーク第2弾、「『プロ野球解説者を解説する』を解説する」のパート3です。

  広尾氏とトーク

 ゲスト 広尾 晃氏(「プロ野球解説者を解説する」著者)  
 ホスト 堀 治喜(広島野球ブックフェア実行委員会) 
 司 会 渡部裕之氏 

〈前回のつづき〉

司会 後の楽屋で、このステージに上がられる前に、おふたりの会話を聞いていて、それぞ
   れのキャラというか色が出るなぁとおもったんですよ。
   堀さんは(広尾氏が)この本を書かれたってことに対して、データ、細かな数字を出
   されていることに感心されていた。
   ああ、このおふたりの作家としてのスタンスの違いみたいなものがあるなー、という
   のを感じたりしながら…

広尾 (司会のヨイショにもわれ関せず)もうねぇ、前に4人残って座ってますけどねぇ、
   そのうちのふたりは、私の親戚なんでね。

司会 あ、ほんまですか。

堀  そのうちひとりは、おれの兄弟だよ。よく似てる。(笑

広尾 これはほんと風雲急を告げてますなぁ。これから天気はどうなりますかね。

堀  だれが最後まで残れるか。(笑

司会 別にそんなことに挑戦してるわけではないので。(苦笑

堀  いまからプログラムを変えて、我慢大会にしますか?(やや黒っぽく笑う

司会 やめてくださいよ。

堀  雨で逃げるか、(ふたりの)話で逃げるか。(笑

司会 そのフリと雨で、同時にいたたまれなくなっちゃいますよ。

堀  それにしても、急にひどくなってきた。

広尾 ここは(テントなんで)大丈夫ですけどね。見ておられる方がつらいですよね。

司会 まあ両サイドにテントがありますので。

堀  数人聞いてらっしゃいますね。 あとはみんな移動しちゃってるよ。

司会 みなさん集中するために移動してるわけですからね。

堀  広尾さんの親戚は、もういまさら逃げられない。(笑

司会 なにを追いつめようとしてんですか、まったく。

  (中略)

司会 ところでおふたり、同じ本を書くにしてもテーマだったりアプローチ(の仕方)だっ
   たり、それぞれですね。

広尾 ぜんぜんちがいますね。

司会 選手にスポットを当てるのか、野球解説者にスポットを当てるのかって、同じ野球と
   いうカテゴリーの中でもね…

広尾 ぼくは選手に取材するというのはゼロじゃないですけど、おまりやってないので。だ
   から密着するよりは、ちょっと引いて書きたいということですよね。
   解説者というのは書いている人がいないから、記録もほとんど残っていないんですよ
   ね。

司会 大量に電波にはのるけど…

広尾 それを録音している人って、あんまりいないんですよね。

司会 たしかに。 それをあらためて掘り起こしてみると、面白い発見があったという?

広尾 だから解説者っていう職業が、いったい何で成り立っているのかってことですよね。
   それがわからなかったんで、まあやってみた、と。

司会 この作品を書くにあたって、どのくらい調べられたり…

広尾 もちろん記憶に残っているとか、記録にあるのもありましたけど、ないものは、きょ
   うも来られているけれど、ビブリオさんていう東京神田の古本屋さんに通って…

司会 ほう。

広尾 昭和20年代、30年代は野球の解説者が何冊か本を出しているんですよね。小西得
   郎さんとか佐々木信也さんとか。それを引っ張り出して来て参考にした、と。
   で、佐々木さんは取材もさせていただいて…。
   まだお元気なんですよ、80才ですけどね。プロ野球ニュースのころとまったく変わ
   らない。
   そんなこんなで、いろいろお話を聞いたりして、たぐり寄せていった感じですね。

司会 最終的に、ああこれだ、野球解説者という仕事はというのが、自分の中で腑に落ちる
   というか…

広尾 解説者というのは漫才でいうところのボケですね。ツッコミとボケのうちのボケの役
   なんですよね。

司会 ツッコミは、アナウンサー…

広尾 そう、アナウンサー。
   だからアナウンサーが、たったったったっ、と弁舌さわやかにしゃべったときに、ど
   ううまいこと合いの手を入れるかが解説者の役割ですね。

司会 ふーん。

広尾 だからそれをわかっていると、しどろもどろの解説してると眠たそうだとか、ほんと
   にもう家に帰りたそうとか…(笑

司会 それは感じるんですね。

広尾 ぼく解説者のこの本書くために、放送ブースに何回か入れていただいたんですよ。こ
   のマツダスタジアムにも行きましたよ。
   ズムスタの放送ブースにも入れていただいたんですけど、誰とはいわないけれども、
   (ブースに)入ったとたんに、「きょうは何時に帰りたいな」っていうんですよね、
   解説者がね。
   で、CMで1回休むたびに「きょうは延長ないよね」ってみんなに聞いたりするよう
   な人もいるわけですよ。
   解説者にとって一番いやなのは延長戦なのよね。家に帰れないっていう。

司会 でもそれは仕事ですからね。

広尾 でもね解説者って、回の切り替えが1分なんですよ。1分間しかない。コマーシャル
   4本分しかないので、おトイレも立てないんで、たしかにハードな仕事ではあるなん
   ですよね。

司会 ああ、そうですね。

広尾 意外に年配の吉田義男さんとか、80近い人は体力があって大丈夫なんですけど、ぼ
   くらくらいの50とかで不摂生がたたっている解説者というのは、途中でだんだんと
   いやになってくるから「そうです」くらいしかいわなくなる。
   そんな解説者、いますよね。

 阪神タイガース 新潮新書 / 吉田義男 【新書】
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司会 時間経過とともに、そのひとのテンションなり、機嫌なりというのが段々変化してく
   るのがわかる。

広尾 で、すごい腹立たしいことがあると、そればっかりいうひとがいる。

司会 お茶の間気分そのまんま、みたいな感じの人。

広尾 そういうときはブースの中も凍りついていますよね。どうしようかみたいになって。

司会 それをずっと取材で見てらしたということですね。

広尾 でも面白かったですけどね。

司会 なかなか貴重な体験ですよね。

広尾 すごくノってるときの解説者同士っていうのは、CMの間にしゃべって盛り上がった
   のを、つぎのオンエアのときにアナウンサーがまとめてしゃべるのにタイミングよく
   返す。そういう流れになったときは、すごいいい解説してるんですよね。
   むっ、としてるときとかはダメ。

司会 タイミングですよね。アナウンサーがこと細かくしゃべって、ひとことで返せる状況
   をつくるか、どうかですね。
   丸投げして、解説者の方ばかりにしゃべらせる場合もあったりするじゃないですか。

広尾 どっちもあんまりよくないんじゃないですかね。
   日本テレビとかは、全部ドラマを書いて来てアナウンサーが試合中にそれを読み上げ
   るというのがあるんですよね。
   あとは誰も何もいえないから、「そうですね」というしかない。
   そういうのは、あまり好きじゃないですね。

司会 なるほどぅ。現場で生まれるものとか、おもったこととかをしゃべってくれる解説者
   を求めたい、と。

広尾 だから、いま明かされる因縁の対決みたいなことで(シナリオ通りに)一生懸命盛り
   上げてしまうと、そこで大した勝負にはならなくて、セカンドゴロかなんかだったり
   したら、がっくりくるじゃないですか。

司会 たしかに。(笑
   さて、プロ野球解説者を解説する、という本を書かれている広尾さんを、堀さんは解
   説したいと、このイベントがはじまる前からおっしゃってらしたんですけれども…

堀  ハンパで終わっちゃいましたね。(笑

司会 いえいえ、困ります困ります、これで終わっちゃ。

                 (第3回 了) 

プロ野球解説者を解説する
プロ野球解説者を解説する

本日は広島野球ブックフェアのトーク第2弾、「『プロ野球解説者を解説する』を解説する」のパート2をお送りいたします。  

 ゲスト 広尾 晃氏(「プロ野球解説者を解説する」著者)  
 ホスト 堀 治喜(広島野球ブックフェア実行委員会) 
 司 会 渡部裕之氏 

〈前回のつづき〉

堀  ぼくも広尾さんのこの本が出たときに読ませていただいたんですけど、まあ気になる
   存在なんだけど、そんなに注意して調べるようなことはしなかった。
   だけどあの本読んで、やっぱり解説者が野球だったりゲームだったり、ひとつのプレ
   イを印象づけてるわけですよね。 それをあらためて感じましたよ。

広尾 ありがとうございます。
   で、お返しするわけじゃないんですけどね。(と、ごそごそ何かを取り出す)

司会 おーっと、出ましたね。
前田智徳天才の証明 [ 堀治喜 ]
前田智徳天才の証明 [ 堀治喜 ]

広尾 (「天才の証明 前田智徳」を掲げて)堀さんのね、この本はね、もう広島市民、一
   家に1冊はぜったいにないといかん本かなと。

司会 家庭の医学か、もしくは前田智徳か、と。

広尾 家庭の医学はなくても、前田智徳はいるんじゃないの、っていうのがありますよ。
   あのー、前田智徳っていうバッターは、すごくいいバッターだってみんないうんです
   けど、どこがいいのか、どこが悪いのかって、そのネガティブな部分をしっかり書い
   ておられるから、すごいな、と。
   つまりバッティングができなければ、ひじょうに困った人やということですよね?

堀  そこでうなずくわけにはいかないんだけど、そういうことが書いてあったのかな。
   (苦笑

広尾 だからイチローなんかとおんなじで、相手が喜ぶようなことがいえないキャラクター
   じゃないですか。そこらが浮き彫りにされてて、すごく面白かったですね。

堀  そういう意味でいうと、引退前の前田智徳なんですね。

広尾 引退してからは、ちがうん?

堀  引退してからは、意外に他人が喜ぶことを…

広尾 それはあれですね、バッティングからトークに…

堀  そう、変えた。だから、すごい器用なんだよ、きっと。 本人も他人に気をつかってい
   るようでは自分は打者というか、野球選手として生き残れないというおもいがずっと
   あったみたいなんですよね。

広尾 そこんところが、引退して180度変わったんやね。

堀  バットの代わりにマイクを持ったらどうすべきなのかというのを、やっぱり彼は知っ
   てるんだよね。

広尾 やっぱり本当の大物というのは人の喜ぶことを先回りしていわないっていうのがあっ
   て、ぼくはそういうタイプは好きですよね。解説者としてというより、(いろいろふ
   くめた)キャラクターとしてね。
   解説者の本にも書きましたけど、野茂英雄さん(なぜか急に「さん」付けに)が面白
   いですよ。

司会 解説が…?

広尾 解説ではないですけど。

司会 解説では、ない?

広尾 感想をいいに来てるんですよ、あの人、わざわざ。ラジオとかの放送で。
   去年でしたか、オリックスの松葉というピッチャーが好投したんですよ。それで、そ
   のあとインタビューで「明日もがんばりますから来てください」みたいなことをいう
   のね。

司会 なるほど。まあまあ、よくね選手のインタビューの後の締めなんかでは、よくそうい
   いますよね。

広尾 「ルーキーの松葉について、野茂さんどうですか?」って聞いたら、新人やのにうま
   いこといいますね。ぼくはできませんといったの。それ、素晴らしいと。

司会 ほんとに自分の率直な感想をいいましたね、それは。

広尾 感想ですね。野茂さんは感想だけですね。
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司会 感想派とか、いろんなジャンルの方がいる?

広尾 やっぱりね、現役時代どんなポジションにいたかによって解説の内容がずいぶんとか
   わるんですよ。

司会 実際の経験値というのは、実際にプレイしたところからの視野とか、どうしてもそう
   なりますよね。

広尾 だから本当の意味の本格的な解説者というのは、だいたいキャッチャーですよね。

司会 あー、なるほど。

広尾 古田敦也さん(彼もなぜか「さん」付け)なんか、すごいでしょ。

司会 たしかに。

広尾 古田さんなんかの解説ですごいとおもうのは、たとえば元のチームメイトですけど、
   ヤクルトの宮本慎也が、たとえばワンアウト一、二塁とかのときに「見てください」
   と。「ショートのポジションの前でゴミを拾う動作をするでしょ。あれは、ここに飛
   んで来いということで挑発してるんだ」と。 てなことをいえるのは、やっぱりあの人
   ですよね。

司会 なるほど。
フルタの方程式 [ 古田敦也 ]
フルタの方程式 [ 古田敦也 ]

広尾 だけどそれを川藤(幸三)さんがいうと、どうなるか。 あの人は代打しかやってない
   人ですから。
   もともと(高校時代は)ピッチャーで、内野手に変わって、外野に行って、1年だけ
   レギュラーっぽくなって、失敗して、そのとき金田正泰という監督に、「お前はこれ
   から心の支えになれ」と。
   つまり戦力としては認めないというふうにいわれて、そっからはベンチのヤジ将軍に
   なるんですけど…

司会 切り替えたんですね。

広尾 だからあの人の解説は、根性論でしかない。

司会 ヤジ将軍だった経験値からの解説しかできない?

広尾 それしかないから、だから「根性やね」しかいわない。

司会 ぅわっ、はっはっ。

広尾 それはそれでいいんですよ。
   それに大リーグに関して知識ないんですよ。ぜんぜん知らなくて。

司会 解説者になったからといって勉強したりというのもなしで?

広尾 阪神タイガースに新外国人ゴメスが来ました。元レッドソックスでそこそこ…、とア
   ナウンサーがほめるようなことをいうたら、「そんなにいいんなら、なんでこんなと
   ころに来たちゅうねん!」いうんですよ。

司会 すいません、お家でお茶の間でテレビ観ながらダベってるわけじゃないんですけど。

広尾 まあ似たようなもんですよね。でも、それでダメかというと、それはそれでOKとい
   うかね。

司会 それが人柄でゆるされるというか…

広尾 それがどっかのチームの本格的にキャプテンやってたような選手がいっちゃダメです
   よ。あの人だからゆるされるけどね。

司会 なるほど。
代打人生論 ピンチで必要とされる生き方 扶桑社新書 / 川藤幸三 【新書】
代打人生論 ピンチで必要とされる生き方 扶桑社新書 / 川藤幸三 【新書】

広尾 広島は、そういう人が多いですよね。あの人ならゆるせる、という人。

堀  みんな、ゆるされてるんじゃないかな。(笑

広尾 昔、金山次郎さんていう、ほんとうに広島が負け出すとすごい機嫌が悪くなってね、
   もういまさらいうてもどうにもならんけどねっ、ていうのが口癖なんですよ。
   (カープが負け出すと)だんだんぶっきらぼうになってね。

堀  あのー、広島の解説で、ちょっと首を傾げざるをえないのがね、ペナントの順位予想
   するじゃない。

司会 はい。

堀  まあ、いまのカープは可能性が当然あるわけだけど、みんな優勝にするんだよね。

司会 まあ、まあね。

堀  で、正直に、いや優勝には届かない、よくて2位じゃないかなっていった瞬間に白い
   目で見るというか、スタジオが凍りついたような感じになるんだよね。解説者の意見
   やことばを封じるような空気。

広尾 それはローカルだからしょうがない。中日ドラゴンズだってそうですよね。

堀  そうはいいながら、たとえば機会があって全国ネットに出てもそうでしょ。 まあ達川
   さんはゆるせるけどね、さっきの話じゃないけど。あの人が勢いでいってるからいい
   か、って。(笑

広尾 達川さんは、飛距離が大きいですよね。

堀  飛距離?

広尾 ことばの飛距離というか、とんでもないことばが出てくる。 ぼくがいまでも一番覚え
   ているのは「明治大学の人は独特のお尻の振り方をする」っていうんですよ。
   高田(繁)さんもそうだった、だれだれもそうだったってね。 ありえないでしょ、そ
   んなこという人。そういうことを平気でいうのがね。

司会 見方というか、ことばのチョイスというか…

広尾 今おもいついたことをいってるだけ、という。それが素晴らしい。あの人は、ゆるさ
   れるんですよね。
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堀  飛距離ということばでおもい出したんだけど、この「プロ野球解説者を解説する」と
   いう本も、ときどき飛びますよね。ちょっと異質にことばが、ぽんっと入ってくる。
   あるインターバルで。 ぼくだったらたぶん使わない、出ないことばが出てくるんです
   よね。
   それを以前読んだときにチェックしてみたんだけど、ちょっと他の野球がらみの本に
   は出てこない。

広尾 ぼく、どっちかというと落語とか、そっちの方のことやってたから。

司会 大阪出身だったりとか…?(といいながら、にわかに降り出した雨に目がいく)
   おふたりの話がまさに風雲急を告げる感じになったところで、お天気まで風雲急を告
   げて来ましたけども…

(土砂降りになって、ステージ前から逃げるように観客が待避する)

広尾 若杉さんが大変そうですね、写真。(と「世界の野球写真展」ブースの写真パネルを
   あわててテント内に撤収しはじめた若杉氏を気遣って)

堀  お前らいい加減なことしゃべるんじゃねーぞ、って天が怒ってる。(苦笑

                     (第2回 了) 

プロ野球解説者を解説する
プロ野球解説者を解説する

きょうからは先日の広島野球ブックフェアのトーク第2弾、「『プロ野球解説者を解説する』を解説する」をお送りいたします。  

 ゲスト 広尾 晃氏(「プロ野球解説者を解説する」著者)  
 ホスト 堀 治喜(広島野球ブックフェア実行委員会)
 司 会 渡部裕之氏 

広尾氏とトーク

司会 さあ、登場いただきました。あらためてご紹介いたしましょう。
   こちらステージ中央に座ってらっしゃるのが広尾晃さんです。よろしくお願いいたし
   ます。

広尾 どうも、こんちは。

司会 そして、その隣に座っていらっしゃいます広島野球ブックフェアの堀治喜さん。

堀  よろしくお願いしまーす。

司会 (もぐもぐしゃべる堀の声がよく聞きとれず)ちょっとすいません、少々お待ちくだ
   さいね、マイクフェーダーをあげてください。(笑

(しばし中断)

司会 あ、はい、来ました。ありがとうございます。
   さてさて、作家の方おふたりを前に、いろいろと聞いていきたいな、なんておもった
   りするわけなんですけど。
   まずはゲストの広尾さんに聞いてみたいんですけども、また、すごいタイトルの本を
   書かれましたね。

広尾 いやー、まあ解説者というのに昔から、ちょっと興味がありましてね。

司会 ほー、ほー。

広尾 解説のおしゃべりをメモ取ったり、音に録ったりしていたことがあるので、それをま
   とめて編集者にどうでしょうっていったら、まあ出しましょうということになってで
   すね。

司会 えっと、その、プロ野球解説者の解説っぷりを、いろいろ記録してらっしゃったんで
   すか?

広尾 意識して記録していたわけじゃないですけど、メモを取ったり記憶があったり。 で、
   ラジオの音を昔、ちょろちょろ録ってたんですよ。

司会 あっ、はいはい同録をね。

広尾 そういうもんがたまたま残っていたりね。

司会 そういうのを聞いていたり、チェックしたりしていくうちに、どういったことに気づ
   いて、また本にしようとおもったんですか?

広尾 書いてることはポジティブなことばかり書いてるですけど、最初はダメな解説者とい
   うのが目につき鼻につきというのがあって…

司会 あっ、はっ、はっはっ。(と屈託なく大笑い)
   いいですね、このアンオフィシャルにオープンな感じで、どんどんと話していきたい
   とおもいますけど。

広尾 だから、こいつはいてる(居る)価値があるかという解説者がいたりするじゃないで
   すか。

司会 ふわっ、はっはっ…。 それは誰のことか、司会者としては聞きたいような、聞いちゃ
   いけないような…

広尾 ちょっと本には書いてますけど、アナウンサーのいうことをゆっくり、同じように繰
   り返すだけの解説者っていますよね。

司会 さすが、この野球ブックフェアに来られるお客さん、大きくうなずくうなずく。食べ
   ながらもうなずく…。 ありがとうございます。

広尾 たとえば「ライト前に見事に弾き返しましたね」ってアナウンサーがいうと、「彼は
   インコースを狙っていたんでしょう。だからジャストミートして右翼、ライト前に行
   きましたね」ってもう1回いうんですよね。 するとアナウンサーが「はー」と感心し
   たふりをする、と。 それじゃ、なんにも語っていないのといっしょでしょ。

司会 話とかの構成もなく、ただ…

広尾 そうそう。ゆっくり同じことを違うことばに置き換えるだけ。

司会 おもい当たることがいろいろありますね、MC(司会)の部分では。(苦笑

広尾 そうでしょ。

司会 (解説者に)そういう特性というか、こういう傾向があるなとか、広尾さんは小さい
   ころから分析したりデータをストックするようなタイプだったんですか?

広尾 そう。まあオタクー、ですよね。

司会 もう自分でいっちゃいましたね。

広尾 割り算覚えたの、ぼく打率からですからね。算数(の授業)で覚えたんじゃなくて打
   率(の算出)で…。 長嶋の打率が知りたくて割り算を覚えた。

司会 すごいです。もう完全に野球からはじまってる----

広尾 そのかわり、算数はできませんでした。それから先は必要としませんでしたから。

司会 割り算から派生させていったわけじゃなかったんですね。 でもそういう小さなころか
   ら、割り算を習っていた小学生のころからもう野球…

広尾 そう、野球のデータを取ってまして、いまでもどっか探せばあるとおもうんですよ。
   うちのオヤジは、ほんと残念がってましたけどね。そういうことにエネルギーを費や
   すことに。

司会 いやいや、いまやそれが仕事になってるわけじゃないですか。

広尾 タマタマね。タマタマですよね。

司会 そのタマタマのね、細ーい糸をつかんで、もしかしたら唯一のタマをちゃんと打って
   いるというのがプロじゃないですか。

広尾 いやいや、うまいことおっしゃるうさぎさんという感じですよね。

司会 なんか、ぼくもこのデータを蓄積されて分析されて、けちょんけちょんにいわれそう
   で怖い。
   ところで、隣で、ほじほじとしてらっしゃいますけど、堀さん、堀さん。

堀  ほじ、ほじ…

司会 (やる気のなさそうなのを見て)ポジティブにいきましょう。
   ちなみにデータを蓄積するとか、なにか堀さんはしてました? 小さいころから。

堀  いや、ぼくはもう、ぜんぜんですね。 データを取るとか、そのグッズを集めるとか、
   きのう長谷川(晶一)さんのように…

司会 そうですね、きのうファンクラブのグッズ話がありましたけど…

堀  ああいう行動はしないしできない。
   野球観るときも、そんなに細部を見ているわけではない。というか、ほとんど覚えて
   ないんですね。

司会 数字とかそういったものを?

堀  彼(広尾氏)なんか数字がスッと入るんだとおもうんだけど、ぼく、あんまり入って
   こないね、野球観てて。なんかドワーン(意味不明)とした印象で観てるんですね。

司会 すごい、広ーい感覚でとらえているとか?

堀  で、ときどき恥ずかしくなるんですね、野球の本を書いているのに、野球のことほと
   んど知らない。

広尾 いやー、そんなことないんじゃないですか。

堀  いやいや、本を書くときはあらためて調べるから。 だから、ぼくの場合は知ってて書
   くんじゃなくて、こういうことがあったんじゃないか、こうなんじゃないかという仮
   説を立てて、そこから調べていくようなところがあるんですよ。

司会 検証していく?

堀  そうね、そうやって書く。だから普段は、ぼーっと観てるんですよ。
   ただ、解説者の解説っていうのは、イヤでも入ってきたりするじゃないですか。
   だから(広尾さんが)、おっしゃることはつねづね感じていたし、やっぱり広島の解
   説者って、木下(富雄氏)さん、大野(豊氏)さん以外は…(笑

司会 きのう(広島野球ブックフェアに)来られた方ですね。
   で、このステージ上でお話をされたおふたり以外は…(笑

堀  …は、どうなのかな、と。(笑

広尾 木下さんのお店、行きましたよね、あのあとね。

司会 そうなんですか?

広尾 そうそう。それで木下さんから直接オーダーを取っていただいて、たくさん飲みまし
   たよね。

堀  それでだな、なんかさっきから酒臭い!(笑

司会 広尾さん(イベントで)日焼けしたわけじゃなくて、それ酒焼け?(笑

堀  まあ木下さんはああいう人柄なので、解説もそうですよね。すこしハイトーンな声で
   やさしい解説。なんか個性があるんですけど、いい個性の解説が意外に少ない。
   さっきのようにアナウンサーが主導していることをうなずいているだけ。 とくに広島
   の解説者の方は、そういう傾向が強い気がする。

広尾 アナウンサーが、ダーとしゃべるね。たとえば、きょうの試合は何勝何敗でどうのこ
   うの。で、きょうはいよいよ決戦ですねっていったら、解説者が「はい」っていうだ
   けのね。 そういう感じのひと、いますよね。

司会 ご意見番にもなってないじゃないですか。

広尾 そういう、ラクをしてる人いるでしょ。

               (第1回 了) 

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