カテゴリ: カープ本クロニクル



1995年 最後のストライク 津田晃代 勁文社(のちに幻冬舎で文庫化)
1996年 西田真二のここで一発 西田真二 アスリート
      もう一度、投げたかった 山登義明・大古慈久 NHK出版
      (のちに幻冬舎で文庫化)
1998年 野球の夢一途に 衣笠祥雄 NHK出版
      スカウト 後藤正治 講談社
1999年 カープ50年 夢を追って 中国新聞社
2001年 超二流のすすめ 三村敏之 アスリート社
      全力投球 大野豊 宝島社
      カープ苦難を乗り越えた男たちの軌跡 松永郁子 宝島社
2002年 山本一義の一球談義 山本一義 渓水社


1993年の夏に津田恒美が他界したのを受けて、2年後に夫人の津田晃代さんによる闘病記が刊行されています。
翌年にはNHKのドキュメンタリー番組「もう一度、投げたかった」が書籍化されて、ちょっとした津田ブームになりました。

脳腫瘍で32才という若さで亡くなったこともあって、ファンも「もう一度、見てみたかった」という未練を残しているのでしょう、津田の人気は現在も衰えることなく、前記の2作は1998、1999年にあいついで文庫化されています。

この頃になると「カープ本」のバリエーションもすこしずつ豊富になってきました。

「西田真二のここで一発」や大野豊の「全力投球」といった自伝のほか、三村敏之の啓発本「超二流のススメ」や、山本一義のエッセイ集「山本一義の一球談義」といった良質の本が出版されています。

また1995年に野茂がメジャーに渡って起きたメジャーブームの余波でしょう、衣笠祥雄がメジャーのスター選手だったロベルト・クレメンテの足跡を訪ねるドキュメンタリー番組「野球の夢一途に」が書籍化されてもいます。

カープ本100冊。すべて読んでみた!
広島野球ブックフェア実行委員会
広島出版
2014-12-25


 

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)
山際 淳司
KADOKAWA/角川書店
2012-06-22

1980 カープ30年 富沢佐一 中国新聞社  
     
江夏の21球 山際淳司 文藝春秋ナンバー
     (後に文庫「スローカーブを、もう一球」に収録)
1984 人間・山本浩二 山本浩二 交通タイムス
1986 走れ、タカハシ 村上龍 講談社
1987 コージのなん友かん友 山本浩二 日刊スポーツ出版社
     ルー・ゲーリッグを超えて 衣笠祥雄 ベースボール・マガジン社
1988 鉄人・衣笠祥雄物語 永山貞義 一光社
1989 浩二の赤ヘル野球 山本浩二 文芸春秋
1992 山本浩二 吉本正彦 ぎょうせい


1980年。カープが初優勝の後に悲願の日本一を成し遂げた翌年、ようやくまとまった年史が地元新聞社によって刊行されています。
その日本一を決めた劇的なドラマを描いた山際淳司のノンフィクション「 江夏の21球」が発表されたのもこの年でした。

80年代はカープ黄金時代。全国区となったスーパースター、山本浩二、衣笠祥雄、高橋慶彦関係の書籍が続々と刊行されています。

「カープ本」が定期的に世に出始めたのはこの頃からといえるでしょう。

カープ本100冊。すべて読んでみた!
広島野球ブックフェア実行委員会
広島出版
2014-12-25

 


1960年 8月 カープ風雪十一年  河口豪 ベースボール・マガジン社
1975年10月 栄光の広島カープ 風雪25年  河口豪 恒文社
     11月 耐えて勝つ 古葉竹識 講談社(ザメディアジョン)
1979年12月 カープ日本一 古葉竹識 我慢の野球 駒沢悟 講談社


いわゆる「カープ本」といえるものの最初は、1960年に刊行された河口豪氏の「 カープ風雪十一年」でしょう。
カープの初代代表だった同氏が11年間におよんだ職を退くにあたって、その記念のように刊行されたもの。
一時は解散の危機にさらされたものの、なんとか軌道にのりはじめた頃で、「すいせんの言葉」で当時の総理大臣・池田勇人が「ようやく一人前になった」と感慨を述べています。

なんといってもカープの中核にいた人物の回想録ですから、球団の誕生からのゴタゴタが生々しくつづられています。
ラッキーなめぐりあわせでうぶ声を上げ、紙一重の綱渡りで存続してきたカープの半生は、スリリングそのもの。
また、なんとかカープをもり立てていこうという気概あふれる人物たちの肖像は、ひとつひとつが魅力的であり感動的でもあります。

ときに筆がすべって筆禍すれすれの下半身スキャンダルも盛り込まれていて、読み物としては極上。
最近のグラウンドレベルで書かれた「カープ本」ばかりが氾濫する中、この古い書籍がかえって鮮度を増して輝いてさえ見えます。

この河口氏から現在まで、球団関係者の回顧録はほとんど世に出ていないのが惜しまれます。 

『風雪十一年』からしばらく、カープ本が刊行されることはありませんでした。野球雑誌の片隅のコラム、あるいは新聞報道がカープ情報のささやかな供給源だったのです。

それが15年後、カープが初優勝すると事態は一変します。
同書はあらたに修正加筆して「栄光の広島カープ  風雪25年」として再刊行されています。
風雪25年
タイトルが漢数字から算用数字に変わっているように、この間には隔世の感があります。
なんといっても万年下位、お荷物球団がリーグのトップチームとなったのですから。
「栄光の〜」が泣かせます。

『風雪十一年』では、巻頭グラビアが古色蒼然とした貧乏時代の写真、たとえば球団の創立に尽力された関係者の肖像、ジョー・ディマジオ来広時のマリリン・モンローとのスナップ、獲得に失敗した長嶋茂雄との記念写真だったりといったサエないものが、全とっかえされて一新。古葉監督はじめV1戦士たちの勇姿で埋めつくされています。

内容については基本的に加筆削除で修正されたもの。カープ優勝を前提に作業が進められ、その最後に優勝を知った筆者の気持ちが書き添えられているというものです。

また、同書のほかにもカープ初優勝にからめて古葉監督の自伝や評伝がたてつづけに刊行されました。

しかし初優勝の騒動が過ぎると、カープ本の刊行もまたパタリと止んでしまいます。
日本一になったとき、古葉カープ本があらたに刊行されたのみ。

まだまだ「カープ本」の需要が喚起されるまでには年月が必要だったのです。
カープ本100冊。すべて読んでみた!
広島野球ブックフェア実行委員会
広島出版
2014-12-25


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