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高萩洋次郎選手がサンフレッチェを退団したという。

サッカーについて、またサンフレッチェに関して、ほとんど情報も知識もないから詳しい事情はわからない。 
しかし広島市民球場の再活用問題、跡地問題とからんで混迷するスタジアム問題について注視しつづけてきた者としては暗い気持ちにならざるをえなかった。

高萩選手は以前から海外挑戦が夢だったというから、スタジアム問題が彼の退団と
直接関係しているとはいいきれない。
しかし、このタイミングで決意したことを考えると、まったく影響がなかったとはいいきれないだろう。

2012年にサンフレッチェはJ1初優勝を成し遂げた。
その歓喜の大波は当然のようにスタジアム問題にまで波及し、サンフレに、そしてサポーターや市民に好ましい環境を整備してやるべきだと「スタジアム建設問題」がにわかに脚光を浴びることになった。

その勢いを厭な予兆として感じたのだろう、広島市の松井市長は優勝が現実のものになりかけると「サンフレは2位でいい」と、地元の首長としてあるまじき迷言を吐いて市民のヒンシュクを買うことになった。

初優勝の歓びからスタジアム建設への期待へと移行して行った流れに、サンフレのサポーターはもちろん、広島市民も跡地問題解決への期待を抱いた。それはまたサンフレ選手たちにとっても希望でもあり願いでもあっただろう。

ところが、自然発生的に生まれてきたスタジアム建設早期実現への機運、市民球場跡地への移転という夢は、合理的な理由もない不可解な障碍によってねじまげられ終息されようとしている。

しかも、そのスタジアム建設反対の“闇の勢力”の背後か中心に、本来ならば大株主として
球団の発展を支援しなければならないはずの広島市がいることを薄々感じはじめた選手たちの落胆失望たるや、いかばかりだろうか。

他球団に行けるチャンスがある選手ならば、あるいは海外に挑戦できる実力があれば、彼らは涙を呑んで退団していくだろう。それを一方的に批難することはアンフェアというものだ。

これまでも毎年のようにサンフレッチェからは主力選手が退団していった。
そして、とうとう高萩洋次郎選手だ。

彼らの多くが「引き抜きにあった」「金につられた」と中傷され、ファンからブーイングをあびることになった。
たしかに金銭が大きな理由のひとつではあったかもしれない。しかし今回カープに復帰することになった黒田博樹投手の例でもわかるように、アスリートのモチベーションは金銭だけではない。

カープの本拠地がドーム球場であったなら、たぶん黒田投手は帰ってくることはなかっただろう。
ズムスタがメジャーの球場に通じる開放的な球場であったことが、復帰のひとつの理由になったとおもう。

ひるがえってエディオンスタジアム。
山奥のイノシシがスタンドに紛れ込んでいてもおかしくないような、ピッチというも気恥ずかしいような球場でプレイする彼らに、サンフレ愛だけで居続けろというのは酷な話だろう。

そんな環境でプレイさせつづけている広島市民、サンフレのサポーター、そして行政や財界こそが、みずから襟を正して自省するべきだろう。

サポーターも市民も、ずっと口惜しいおもいをしつづけてきたスタジアム問題。
その障碍になっている行政や一部財界の人間、それこそ金や利権につられて反対のための反対をとなえている人間たちにこそ、あらためてブーイングをあびせるべきだろう。

                 カープ本評論家 堀 治喜




 

プロ野球解説者を解説する
プロ野球解説者を解説する

本日は広島野球ブックフェアのトーク第2弾、「『プロ野球解説者を解説する』を解説する」のパート3です。

  広尾氏とトーク

 ゲスト 広尾 晃氏(「プロ野球解説者を解説する」著者)  
 ホスト 堀 治喜(広島野球ブックフェア実行委員会) 
 司 会 渡部裕之氏 

〈前回のつづき〉

司会 後の楽屋で、このステージに上がられる前に、おふたりの会話を聞いていて、それぞ
   れのキャラというか色が出るなぁとおもったんですよ。
   堀さんは(広尾氏が)この本を書かれたってことに対して、データ、細かな数字を出
   されていることに感心されていた。
   ああ、このおふたりの作家としてのスタンスの違いみたいなものがあるなー、という
   のを感じたりしながら…

広尾 (司会のヨイショにもわれ関せず)もうねぇ、前に4人残って座ってますけどねぇ、
   そのうちのふたりは、私の親戚なんでね。

司会 あ、ほんまですか。

堀  そのうちひとりは、おれの兄弟だよ。よく似てる。(笑

広尾 これはほんと風雲急を告げてますなぁ。これから天気はどうなりますかね。

堀  だれが最後まで残れるか。(笑

司会 別にそんなことに挑戦してるわけではないので。(苦笑

堀  いまからプログラムを変えて、我慢大会にしますか?(やや黒っぽく笑う

司会 やめてくださいよ。

堀  雨で逃げるか、(ふたりの)話で逃げるか。(笑

司会 そのフリと雨で、同時にいたたまれなくなっちゃいますよ。

堀  それにしても、急にひどくなってきた。

広尾 ここは(テントなんで)大丈夫ですけどね。見ておられる方がつらいですよね。

司会 まあ両サイドにテントがありますので。

堀  数人聞いてらっしゃいますね。 あとはみんな移動しちゃってるよ。

司会 みなさん集中するために移動してるわけですからね。

堀  広尾さんの親戚は、もういまさら逃げられない。(笑

司会 なにを追いつめようとしてんですか、まったく。

  (中略)

司会 ところでおふたり、同じ本を書くにしてもテーマだったりアプローチ(の仕方)だっ
   たり、それぞれですね。

広尾 ぜんぜんちがいますね。

司会 選手にスポットを当てるのか、野球解説者にスポットを当てるのかって、同じ野球と
   いうカテゴリーの中でもね…

広尾 ぼくは選手に取材するというのはゼロじゃないですけど、おまりやってないので。だ
   から密着するよりは、ちょっと引いて書きたいということですよね。
   解説者というのは書いている人がいないから、記録もほとんど残っていないんですよ
   ね。

司会 大量に電波にはのるけど…

広尾 それを録音している人って、あんまりいないんですよね。

司会 たしかに。 それをあらためて掘り起こしてみると、面白い発見があったという?

広尾 だから解説者っていう職業が、いったい何で成り立っているのかってことですよね。
   それがわからなかったんで、まあやってみた、と。

司会 この作品を書くにあたって、どのくらい調べられたり…

広尾 もちろん記憶に残っているとか、記録にあるのもありましたけど、ないものは、きょ
   うも来られているけれど、ビブリオさんていう東京神田の古本屋さんに通って…

司会 ほう。

広尾 昭和20年代、30年代は野球の解説者が何冊か本を出しているんですよね。小西得
   郎さんとか佐々木信也さんとか。それを引っ張り出して来て参考にした、と。
   で、佐々木さんは取材もさせていただいて…。
   まだお元気なんですよ、80才ですけどね。プロ野球ニュースのころとまったく変わ
   らない。
   そんなこんなで、いろいろお話を聞いたりして、たぐり寄せていった感じですね。

司会 最終的に、ああこれだ、野球解説者という仕事はというのが、自分の中で腑に落ちる
   というか…

広尾 解説者というのは漫才でいうところのボケですね。ツッコミとボケのうちのボケの役
   なんですよね。

司会 ツッコミは、アナウンサー…

広尾 そう、アナウンサー。
   だからアナウンサーが、たったったったっ、と弁舌さわやかにしゃべったときに、ど
   ううまいこと合いの手を入れるかが解説者の役割ですね。

司会 ふーん。

広尾 だからそれをわかっていると、しどろもどろの解説してると眠たそうだとか、ほんと
   にもう家に帰りたそうとか…(笑

司会 それは感じるんですね。

広尾 ぼく解説者のこの本書くために、放送ブースに何回か入れていただいたんですよ。こ
   のマツダスタジアムにも行きましたよ。
   ズムスタの放送ブースにも入れていただいたんですけど、誰とはいわないけれども、
   (ブースに)入ったとたんに、「きょうは何時に帰りたいな」っていうんですよね、
   解説者がね。
   で、CMで1回休むたびに「きょうは延長ないよね」ってみんなに聞いたりするよう
   な人もいるわけですよ。
   解説者にとって一番いやなのは延長戦なのよね。家に帰れないっていう。

司会 でもそれは仕事ですからね。

広尾 でもね解説者って、回の切り替えが1分なんですよ。1分間しかない。コマーシャル
   4本分しかないので、おトイレも立てないんで、たしかにハードな仕事ではあるなん
   ですよね。

司会 ああ、そうですね。

広尾 意外に年配の吉田義男さんとか、80近い人は体力があって大丈夫なんですけど、ぼ
   くらくらいの50とかで不摂生がたたっている解説者というのは、途中でだんだんと
   いやになってくるから「そうです」くらいしかいわなくなる。
   そんな解説者、いますよね。

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司会 時間経過とともに、そのひとのテンションなり、機嫌なりというのが段々変化してく
   るのがわかる。

広尾 で、すごい腹立たしいことがあると、そればっかりいうひとがいる。

司会 お茶の間気分そのまんま、みたいな感じの人。

広尾 そういうときはブースの中も凍りついていますよね。どうしようかみたいになって。

司会 それをずっと取材で見てらしたということですね。

広尾 でも面白かったですけどね。

司会 なかなか貴重な体験ですよね。

広尾 すごくノってるときの解説者同士っていうのは、CMの間にしゃべって盛り上がった
   のを、つぎのオンエアのときにアナウンサーがまとめてしゃべるのにタイミングよく
   返す。そういう流れになったときは、すごいいい解説してるんですよね。
   むっ、としてるときとかはダメ。

司会 タイミングですよね。アナウンサーがこと細かくしゃべって、ひとことで返せる状況
   をつくるか、どうかですね。
   丸投げして、解説者の方ばかりにしゃべらせる場合もあったりするじゃないですか。

広尾 どっちもあんまりよくないんじゃないですかね。
   日本テレビとかは、全部ドラマを書いて来てアナウンサーが試合中にそれを読み上げ
   るというのがあるんですよね。
   あとは誰も何もいえないから、「そうですね」というしかない。
   そういうのは、あまり好きじゃないですね。

司会 なるほどぅ。現場で生まれるものとか、おもったこととかをしゃべってくれる解説者
   を求めたい、と。

広尾 だから、いま明かされる因縁の対決みたいなことで(シナリオ通りに)一生懸命盛り
   上げてしまうと、そこで大した勝負にはならなくて、セカンドゴロかなんかだったり
   したら、がっくりくるじゃないですか。

司会 たしかに。(笑
   さて、プロ野球解説者を解説する、という本を書かれている広尾さんを、堀さんは解
   説したいと、このイベントがはじまる前からおっしゃってらしたんですけれども…

堀  ハンパで終わっちゃいましたね。(笑

司会 いえいえ、困ります困ります、これで終わっちゃ。

                 (第3回 了) 

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