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カープ本100冊。すべて読んでみた!
広島野球ブックフェア実行委員会
広島出版
2014-12-25

新春の「カープ本検定」事始めということで、おめでたいお題です。

「日本タイトルだけ大賞」というのをご存じでしょうか。

毎年8万点前後が出版され埋もれていくという書籍の中から、タイトルがコピーとして優れたもの、日本語として美しいもの、面白いものを顕彰しようという奇特な賞です。

いかにも売れ線なもの、珍しさを狙ったもの、技巧的に優れたもの、芸術性など多様な方面から評価。本の中身のよしあしは関係なく、タイトルと中身のギャップの面白さなど、タイトルのみを評価して表彰するというものです。

2009年から創設され、いま第7回のエントリー作品を募集しています。

実は、このユニークな賞を受賞しているカープ本があるのですね。
それはつぎのうちのどれでしょうか?

 ①衣笠祥雄はなぜ監督になれないのか?
 ②誰が、市民球場を壊したのか?
 ③マツダ商店(広島東洋カープ)はなぜ赤字にならないのか?
 ④ 神さま、そろそろカープに優勝を!

検定ロゴ

どれもユニークで面白いタイトルです。
で、この中から同賞を受賞したのは…

答えは④です。

神さま、そろそろカープに優勝を!」が2012年の「夏の陣」で受賞しています。
おしくも大賞は逃しましたが、「山田真哉賞」という、この賞の創設者の名前が冠された賞に輝いています。

同賞はツイッターでノミネート作品を申告できるため、毎年何十という作品がノミネートされています。
その中からの選出ですから、見事というしかありません。

受賞理由については不明ですが、2012年3月の時点で、「そろそろ」という条件つきながら「カープの優勝」をタイトルに謳った勇気とシャレっ気が評価されたのでしょうか。

ちなみに①②③の作品も2012年にノミネートされていましたが、惜しくも受賞は逃しています。

カープ本100冊。すべて読んでみた!
広島野球ブックフェア実行委員会
広島出版
2014-12-25


「驚愕」という言葉しかみつからない。
黒田博樹投手がカープに復帰する道を選んだという。

毎年オフになると復帰の噂はもちあがっていたし、その可能性は感じながらも、こうして現実のこととなってみると、やはり驚愕を禁じ得ない。

20億円のオファーを断って、だれもが憧れるメジャーという環境を蹴って、4億円程度の年俸を呑んで日本のローカルチームにもどってくるというのだから。

経済至上主義、金の出入りでひとが動き、人間の評価が決まってしまうようないびつな世の中に、また彼の「男気」が一陣の清風を巻き起こした。

彼が一度はメジャーの誘いを断ってカープに残留したとき、彼の「男気」は社会的な話題ともなったが、今回の復帰では袖にしたものの大きさがちがう。復帰の意味の大きさも破格といえる。

これで新井貴浩と黒田博樹。2007年オフにFAで移籍していったふたりが古巣に帰ることになった。元のサヤならぬ元(はじめ)のサヤにもどったことになる。

このオフに新井貴浩選手が阪神タイガースから自由契約となったとき、まっさきに口説いたのが、ほかならぬ松田元オーナーだったと聞く。
そして今回の黒田投手の復帰に関しても、いつもは破格の年俸(低いという意味で)だけ提示して、あとは返答待ち。「誠意」はみせたとポーズばかりに見えた球団が、熱心に3度も接触して復帰を熱望したという。その背景に彼の意向がはたらいたことはいうまでもない。

07年にFAの権利を発言権にかえて「優勝するために自分たちを選ぶのか、彼を選ぶのか?」と球団に迫った新井、黒田に対して、「優勝」よりも「商売」を選んで球団のトップはファンのヒンシュクを買うことになった。
あのときの選択肢の一方がチームをさった今、千載一遇のチャンスとばかりに汚名をそそごうということなのだろうか。

もちろん「優勝」にこだわってチームを出て行った黒田投手のことだ、カープに「優勝」の手応えを感じたことがあっただろうし、そこに自分が加わってチームに恩返しをしたい。そうおもっての決断だろう。

それにしても、カープは本当に黒田投手の「男気」に報いるに年俸4億円しか用意できなかったのか ?
そんなヤボなセンサクは、彼の英断を素直に讃えてこの際おいておこう。 

新井選手は優勝が前提となっていた阪神タイガースで、とうとう一度もペナントを手にすることはできなかった。
黒田投手も、優勝が義務づけられているニューヨーク・ヤンキースで投げながら、ついに優勝の美酒を味わうことは叶わなかった。

この優勝に飢えたふたりが、よその大河を泳いだ後にふたたびカープというチームに合流したことで何らかの化学反応が起こり、カープが久しく手にできなかったペナントを手にすることを、こころから望み応援したい。

これでカープは、優勝できるかどうかではなく、優勝するしかなくなった。

                            カープ本評論家 堀 治喜
決めて断つ
「カープ本100冊。すべて読んでみた!」より





4番打者論 (宝島社新書)
掛布 雅之
宝島社
2014-04-03


セ・リーグのペナントレース。なんだか雲行きが怪しくなってきました。

カープが猛追して、いつの間にか首位のジャイアンツとは1ゲーム差。

カープ強し!

てか、開幕前はガチな優勝候補だったジャイアンツにしても、意外に健闘していたタイガースにしても、なにもそこまでというほどもたついてくれたおかげで、鯉は虎をすーっと追い抜き、巨人の背中に追いついてきたという印象。

ぐわんばれプロ野球 !

それはそれとして、きょうのカープのオーダーには驚かされました。

4番に丸、で3番が菊池。

1番に入った鈴木を9番に見立てれば、ひとつずつスライドしただけではありますが、それにしても座りが悪い。

1990年代のいつでしたか、オリックスがまだブルーウェーブだったころ、仰木監督がマジックで柄にも無い谷佳知選手を4番に抜擢。本人すらびっくりしてスコアボードのオーダーを記念撮影して笑いを誘ったことがありました。

せっかくですから、きょうのカープのオーダーもここに記録しておきましょう。
ちなみにカッコ内は入団年数。
若いチームというかなんというか、他球団では考えられない抜擢ぶりです。
ぐわんばれベテラン!

 1番 鈴木誠也(2)
 2番 田中広輔(1)
 3番 菊池涼介(3)
 4番 丸 佳浩(7)
 5番 梵 英心(9)
 6番 小窪哲也(7)
 7番 堂林翔太(5)
 8番 會澤 翼(8)
 9番 バリントン(ー)

オリックスの仰木マジックとは様相はちがうとはいえ、どちらも苦肉の策。
あきらかに自他共に認めるワンポイントだった谷選手にくらべ、丸選手はいずれは本当の4番になる可能性はあるとはいえ、まだ青い。
やはりきょうのオーダーには違和感がありました。

カープが最後に優勝した1991年も、たしかこんな感じでしたね。
真の4番がいなかったために、4番目の打者が毎日のようにころころ日替わり定食。
それまで代打出場が多かった西田真二選手が4番をつとめたりしてましたっけ。

「カープに真の4番がいない年は優勝する」
そんなジンクスはどこにもありませんが、いまの勢いからはそんなことをおもわせます。

まあ邪道といってしまえばそれまでですが、「蛇の道は蛇」でしたっけ、1991年と同じ道をカープは走り抜けるかもしれません。

男道 (幻冬舎文庫)
清原 和博
幻冬舎
2010-03







 

心の伸びしろ [ 石井琢朗 ]
心の伸びしろ [ 石井琢朗 ]

きょうは、上位戦線にかろうじて踏みとどまっているカープを支えるコーチ、石井啄朗氏のこの本を。

以前、「過去にあらがう」の共著者として登場しているので、フルイニングはさておき、連続試合出場といった感じになってしまったが、こちらにも事情と都合があるのでおゆるし願いたい。

この本は著者がカープで晩年の4年間を送った後に現役引退し、守備走塁コーチとなった2013年に刊行された。

20年間在籍した横浜ベイスターズを追われるように退団し、2000本安打を達成した自由契約選手としてカープに移籍してきた著者の“外様のまなざし”が、カープというチームの魅力を客観的に伝える。

「チームは家族的で、フロントは筋を通すし選手を大事にする。カープに来て本当によかった」と、著者は心底から述懐している。

少し著者の抱くチーム像が美化され過ぎではないかとおもう節もあるが(とくに球団トップに関する評と、選手の扱いについては賛否両論あるだろう)、カープというチームでの経験が著者を変え、成長させたことは疑いがない。

横浜から広島への移籍。そして選手から指導者に—。
その過程で学んだ「心の伸びしろ」という視点。
また「得る」ことから「与える」ことへ心境の変化。
そこへと至る「心の旅路」は、じわじわと感動的だ。

「スキルアップには限界があるが、心の伸びしろは無限だ」
そのことに気づいてほしいと願う著者のおもいは、薄日からのぞいた太陽のように温かい。
指導者として得がたい資質を著者が持っていることは、おのずとにじみ出て来る。

カープの4番はエルからロサリオに変わったが、この本であなたの人生の指針も「得る」から「与える」に変わるかもしれない。

ファンサービスとはなにか? 
魅せる野球とはなにか? 

「与える」という境地に至った著者は、自己にとどまらず、そのおもいはチームへ、そして球界全体へと広がっている。

この著者の意識、その存在が、カープがまがりなりにも上位で戦えるチームになったことに、大きく寄与していることを疑うファンはいないはずだ。

しかし、これだけしっかりとした自分を持ち、意見があれば誰にでもいうという著者がカープにいるという不思議。
そんなことにおもいをはせながら読んでみると、また味わいはひとしおかもしれない。

 

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